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ルーブリックに関する一考察

time 2017/04/24

考察の目的

成績評価の厳格化・単位の実質化など大学は多くを求められている。美大においてもその流れは例外ではなく、様々な取り組みを行わなければならない。それは芸術系といえども学位を授与している機関であり、当然のことである。本考察ではそのような中で成績評価の厳格化の一旦を担うルーブリックについて整理するとともに2016年6月現在での状況をまとめる。また、ルーブリックを美大に導入した場合について考察を加えることとする。なお、本論では主に大学に関するルーブリックを前提とする。

 

ルーブリックの背景

まず、ルーブリックが重要性が高くなってきた背景を考えてみたい。その背景には大学設置基準の改定がある。大学設置基準第25条の2第2項には以下の通りとなっている。

 

(成績評価基準等の明示等)
第二十五条の二 大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
2 大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする。

 

この設置基準は文部科学省高等教育局長名で出された「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知)」(19文科高第281号 平成19年7月31日)により改定となっている。さて設置基準が改定となった背景には何があるのだろうか。

成績評価の不透明性、つまり成績評価が教員の裁量に依存しているため、成績評価の基準を明示し、その基準に従って成績評価を行うことが重要視されてきたためである。
基準は文章においても示すことができるが、より可視化されたのがルーブリックである。ルーブリックはアメリカで発展してきたシステムであり、

 

主に質保証の一環として、また学習成果の証明というアクレディテーション機関(連邦政府)からの学習成果証明への圧力への対応のひとつ1

 

として導入されたものであり、広く大学教育の現場で普及している。

 

ルーブリックは導入する機関によって多種多様のルーブリックがある。言い方もまちまちである。

ここではルーブリックを成績評価に使用する評価表のこととし、評価項目(評価したい観点及び評価規準)を縦軸に、評価基準を横軸にしたマトリクス形式で表したものとする。縦軸に評価の観点が入っていることから履修学生にとって 学習する項目が分かりやすく、横軸には評価の基準が入っていることから、どのレベルまで到達すればどの評価が得られるか分かりやすく示すことができる。

ルーブリックの目的・利点
ルーブリックの目的は、学生に予め評価の内容や到達目標等の評価軸を示すことで、「何が評価される事柄なのか」といった情報を共有し、評価の信頼性を高めることにある。ルーブリック導入による考えられるメリットは以下の通りである。

イ) 学生が到達目標や評価基準を意識して学修に取り組むことができる。
ロ) 評価者の主観的ばらつきを縮小し、評価の標準化ができる。
ハ) 成績評価の公平性・客観性の確保ができる。
ニ) 学修の振り返りに活用できる。
ホ) 授業計画の改善に活用し、教育の質向上を図ることができる。

 

つまり、学生がどこまでの知識技能を習得すればどのような成績評価されるか意識して学習を進めることができる。また、成績評価は個人の感覚に左右されず、成績評価の平準化につながる。特に美大における感覚的な採点基準がなくなり、裏付けの取れる成績評価となることから信頼性が高まる。

また、型にはまった評価しかできないと危惧される場合もあるかもしれないが、ルーブリックの書き方を工夫すれば問題ないと思われる。

評価項目に発想や創造性といった観点で評価すれば良いのではないか。

ルーブリックではどの授業にもあるはずの単位を与える基準をわかりやすく可視化することにある。

ある一定の基準、つまりは大学としての知識技能を身につけず良い発想ができるのみで評価するのは各教員の主観が入り、公平な成績評価にならない。

しかし、ルーブリックの作成が大変であり、また何回か修正する必要がある。完成までに時間がかかるのが難点と言えるかもしれない。

 


ルーブリックの現状

美術系大学へのルーブリックの導入はあまり進んでないと思われる。2016年6月時点でネット上で閲覧できたシラバスの中で導入されていたのは九州大学芸術工学部(美術系大学とは言えないが…)である。

九州大学芸術工学部のルーブリックでは評価の観点ごとに「優秀」と「良好」と「再履修」の3段階で明記されていたり、SABCの4段階で明記されていたりと統一されていないようである。授業ごとに評価の基準がバラバラになるのではなく、統一したほうが良いと思われる。

残念ながらその他では導入しているところは確認できなかった。

 

今後に期待したい。

 

参考引用文献

平成13・14 年度科学研究費補助金(基礎研究 C )研究成果報告書
客観的な評価をめざすルーブリックの研究開発
(課題番号 30214589)
平成 15 年3 月
研究代表者 河合 久
(国立教育政策研究所 研究企画開発部 企画調整官)

 

1 中央教育審議会高等学校教育部会資料
ルーブリックを活用したアセスメント
2012.11.19
関西国際大学 学長 濱名 篤

 

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